桜のブンガク・現代編 [文学]
桜の開花宣言がされると人々は浮き足だってくる気がします。文学の上でも、桜は古典に限らず常に日本人とともにあるようです。ただ、近代以の、文学の桜はなぜか死と隣り合わせという感じがします。
梶井基次郎 「桜の木の下には」
桜の樹の下には死体が埋まっている。それは信じていいことなんだよ。だって桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。
桜の樹の下に死体が埋まっている。日本人のほとんどの人はこの言葉を感覚的に理解できるのではないでしょうか?夜の闇。咲き狂う桜。当然桜は染井吉野でしょう。白に近いピンクの花びらが舞い、この世のものとも思われない妖しさ。息苦しくなるような濃密な闇と桜花。
坂口安吾「桜の満開の下」
桜を恐れる山賊。通りかかった旅人を襲い、その妻を我が物にする。けれども、山賊はいつしかその女に操られ、次々に生首を女にささげる。
かなりコワイ。感覚的にコワイ。多分日本人だからコワイ。桜=女=妖。
うえ2作と比べるとさすが京都さんは華やか桜
谷崎潤一郎「細雪」
京都の華やかな桜が楽しめます。桜の文学の王道を行く作品でしょう。平安神宮の桜。嵐山に向かう広沢池の桜。四姉妹が既に桜花のように艶やかなので、想像するだけでわくわくします。映画でも目を見張るようなお着物がざくざく登場し、瞬きできません。
ぱっと咲き、ぱっと散る、染井吉野=桜のイメージが出来る江戸時代後期から桜と死は密接になり、やがて第二次世界大戦を経てそれは日本人のDNAに深く刻まれたのではないでしょうか。
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