金魚のブンガク [文学]
うつくしきもの。金魚のいと赤きに、尾のながくたなびきたる。目など大きなるはいとをかし。
金魚はご存知の通り、江戸時代に中国から輸入された生物です。ですから当然平安時代等の書物には登場しません。でも、もし平安時代に金魚がいたら清少納言は必ず枕草子に取り上げていたと思うのです。
うつくしきもの(かわいらしいもの)で創作してみましたが、清少納言の美意識からいうとあてなるもの(上品なもの)になるかもしれませんね。
で、金魚モチーフのブンガクは近現代にならざるをえず、現代作品を2点紹介します。
金魚
金魚のうろこは赤いけれども
その目のいろのさびしさ
さくらの花はほころべども
かくばかり
なげきの淵に身をなげすてたる我の悲しさ
萩原朔太郎
朔太郎は独特の感性を持つ詩人。「月に吠える」に代表される、ひんやりとした言葉が印象的です。この詩での金魚も、夜の闇の中泳ぐイメージですね。
金魚のおはか
くらい さみしい 土のなか
金魚はなにをみつめてる
夏のお池の藻の花と
ゆれる光のまぼろしを
しずかな しずかな 土のなか
金魚はなにをきいている
そっと落ち葉の上をゆく
夜のしぐれのあしおとを
つめたい つめたい 土のなか
金魚はなにをおもってる
金魚屋の荷の中にいた
むかしむかしのともだちを
金子みすず
金子みすずはキモノ姫たちにも愛され、近年またドラマになったりしてクローズアップされましたね。
私が思いつくのはこんな何か物悲しく、淋しい金魚ばかり。愛らしい、楽しい金魚モチーフのブンガク誰か教えてくださいませんか。
はじめまして。
いつも楽しく拝読しております。
室生犀星の『蜜のあわれ』はいかがでしょう? 小悪魔な金魚とおじさまの会話が楽しいです。
by イチコ (2009-09-02 22:02)
イチコさんへ
コメントありがとうございます!さっそく読んでみます。文学記事にコメントいただくの多分初めてなのですっごく嬉しいですううう。アンティーク着物と共にブンガクについて書きたいって思ったものの、皆さんにはつまらないかなあ?と思ってました。着物柄と共にがんばります。
by madamM (2009-09-03 00:29)