歌留多のブンガク [文学]
このところ、ブンガク記事、ご無沙汰してました。
モチーフとひらめくブンガクが揃わないと書けないのです
でも、最近はブンガク記事が好き!とおっしゃってくださる方もいらして(ありがたいことです)
頑張って書いていきます。
ところで…今日のブンガクは歌留多です。
先日国立東京博物館に着ていった、アンティーク反物から仕立てた牡丹の長羽織の羽裏です。
歌留多のブンガクとして取り上げたいのは
夏目漱石「こころ」
意外でしょうか?
そうですよね。でも、歌留多で最初に思いついたのが「こころ」でした。
「こころ」はいわずもがなですが…
学生時代、親友Kを死なせてしまった「先生」と、彼をを慕う学生の「私」。
「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の
三部で構成されますが、多分皆さんが強い印象をお持ちなのが「先生と遺書」でしょう。
私とKとお嬢さんをめぐる策略と葛藤。利己心と慈愛。
Kの「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」という言葉は誰もが覚えていると思います。
「こころ」のどの場面に歌留多がでてくるかといいますと
Kを旅行に誘い、お嬢さんを好きだと打ち明けるつもりが言い出せず
おまけに、Kに「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」と侮蔑したように言われ、もんもんとしている私。
そのうち年が暮れて春になりました。ある日奥さんがKに歌留多をやるからだれか友だちを連れてこないかと言ったことがあります。するとKはすぐ友だちなぞは一人もいないと答えたので、奥さんは驚いてしまいました。
と頑ななKの態度ですが奥さんとお嬢さんとに引っ張り出され4人で歌留多をやることになります。
こういう遊戯をやりつけないKはまるで懐手(ふところで)をしている人と同様でした。私はKにいったい百人一首の歌を知っているかと尋ねました。Kはよく知らないと答えました。私の言葉を聞いたお嬢さんは、おおかたKを軽蔑するとでも取ったのでしょう。それから目立つようにKの加勢をしだしました。しまいには二人がほとんど組になって私に当たるというありさまになってきました。私は相手次第では喧嘩をはじめるかもしれなかったのです。さいわいにKの態度は少しも最初と変わりませんでした。彼のどこにも得意らしい様子を認めなかった私は、無事にその場を切り上げることができました。
この出来事の二三日後Kは、私にお嬢さんへの切ない恋心を打ち明けるのです。
そして、私は策略をめぐらせ、Kに自分が言われた「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」と言い放ち
逡巡しながらもとうとう奥さんにお嬢さんとの結婚の申し出をすることとなります。
その後は皆さんご存知の通り、Kは自殺し、罪悪感の中で誰にも(奥さんとなったお嬢さんにさえ)心をあかすことなく、絶望的な孤独の中で生きていきます。
「こころ」には「淋しい」という言葉が何度もでてきます。
「先生と私」の中でも先生(Kを死なせた私)は私に「私は淋しい人間です」と言います。
最後は明治の終焉と共に先生も自殺してしまうのですが、読み返すたび、この歌留多の場面でこころがざわつきます。
どうでしょう?この歌留多の様子…目に浮かびませんか?
何てことない場面で、読み流していた方、再読されてみてはいかがでしょう?
以前「こころ」がテレビドラマ化された時Kを若き香川照之が演じていました。
スゴイ迫力で、すでに弥太郎の片鱗が見てとれます(笑)
ちなみにお嬢さんは葉月里緒菜でした(魔性の女とか言われてましたね)
ところでこのお嬢さんの名前覚えてらっしゃいますか?
答えは「静(しず)」です。
ランキングに参加してみました。
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モチーフとひらめくブンガクが揃わないと書けないのです
でも、最近はブンガク記事が好き!とおっしゃってくださる方もいらして(ありがたいことです)
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ところで…今日のブンガクは歌留多です。
先日国立東京博物館に着ていった、アンティーク反物から仕立てた牡丹の長羽織の羽裏です。
歌留多のブンガクとして取り上げたいのは
夏目漱石「こころ」
意外でしょうか?
そうですよね。でも、歌留多で最初に思いついたのが「こころ」でした。
「こころ」はいわずもがなですが…
学生時代、親友Kを死なせてしまった「先生」と、彼をを慕う学生の「私」。
「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の
三部で構成されますが、多分皆さんが強い印象をお持ちなのが「先生と遺書」でしょう。
私とKとお嬢さんをめぐる策略と葛藤。利己心と慈愛。
Kの「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」という言葉は誰もが覚えていると思います。
「こころ」のどの場面に歌留多がでてくるかといいますと
Kを旅行に誘い、お嬢さんを好きだと打ち明けるつもりが言い出せず
おまけに、Kに「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」と侮蔑したように言われ、もんもんとしている私。
そのうち年が暮れて春になりました。ある日奥さんがKに歌留多をやるからだれか友だちを連れてこないかと言ったことがあります。するとKはすぐ友だちなぞは一人もいないと答えたので、奥さんは驚いてしまいました。
と頑ななKの態度ですが奥さんとお嬢さんとに引っ張り出され4人で歌留多をやることになります。
こういう遊戯をやりつけないKはまるで懐手(ふところで)をしている人と同様でした。私はKにいったい百人一首の歌を知っているかと尋ねました。Kはよく知らないと答えました。私の言葉を聞いたお嬢さんは、おおかたKを軽蔑するとでも取ったのでしょう。それから目立つようにKの加勢をしだしました。しまいには二人がほとんど組になって私に当たるというありさまになってきました。私は相手次第では喧嘩をはじめるかもしれなかったのです。さいわいにKの態度は少しも最初と変わりませんでした。彼のどこにも得意らしい様子を認めなかった私は、無事にその場を切り上げることができました。
この出来事の二三日後Kは、私にお嬢さんへの切ない恋心を打ち明けるのです。
そして、私は策略をめぐらせ、Kに自分が言われた「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」と言い放ち
逡巡しながらもとうとう奥さんにお嬢さんとの結婚の申し出をすることとなります。
その後は皆さんご存知の通り、Kは自殺し、罪悪感の中で誰にも(奥さんとなったお嬢さんにさえ)心をあかすことなく、絶望的な孤独の中で生きていきます。
「こころ」には「淋しい」という言葉が何度もでてきます。
「先生と私」の中でも先生(Kを死なせた私)は私に「私は淋しい人間です」と言います。
最後は明治の終焉と共に先生も自殺してしまうのですが、読み返すたび、この歌留多の場面でこころがざわつきます。
どうでしょう?この歌留多の様子…目に浮かびませんか?
何てことない場面で、読み流していた方、再読されてみてはいかがでしょう?
以前「こころ」がテレビドラマ化された時Kを若き香川照之が演じていました。
スゴイ迫力で、すでに弥太郎の片鱗が見てとれます(笑)
ちなみにお嬢さんは葉月里緒菜でした(魔性の女とか言われてましたね)
ところでこのお嬢さんの名前覚えてらっしゃいますか?
答えは「静(しず)」です。
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高3の時の『文学特講』の授業の最終試験が、「『こころ』の続きを書け」だったのに、ストーリーがすっかり抜け落ちていました(笑) 当然 お嬢さんの名前なぞ忘れておりました~。なんだか久々に触れて、読み返したくなりました。
by つる (2011-02-03 22:06)
「こころ」中学生の時に読みました。
衝撃を受けたことを今でも覚えています。
by millet (2011-02-04 12:02)
つるさんコメントありがとうございます。
漱石は何度読み返しても、新しい発見ができるとともに、人間のエゴイズムという普遍的なテーマを突きつけられます。私は特に漱石の文体とか、あの時代の言いまわしが大好きなのですが、東京が都会になっていく、着物も大正ロマンの萌芽が感じられます。
わかりにくい部分があったかな?と思い、加筆しましたので再読いただけると幸いです。
by madamM (2011-02-04 15:39)
milletさんコメントありがとうございます。
100年も前に書かれた小説とは思えませんよね。私世代の方々は多分皆さん一度は読んだことあると思うのですが、若い方はどうなんでしょうか?
by madamM (2011-02-04 15:42)
「こころ」、読んだかどうか定かでないので、読んでみたいと思います。
by asaka (2011-02-05 11:44)
夏目漱石の「こころ」は当時の朝日新聞の連載小説でしたから、最近の「悪人」みたいな感じで読まれていたのでしょう。是非再読されてみて下さい。
by madamM (2011-02-05 16:04)