帯留めがつなぐ~広がる世界 [着物]

平和島骨董祭の時、丸山さんのブースでルーペで帯留を熱心に見ている女性がいらしゃいました。
丸山さんのところの帯留は銘が入っているものも多いし
ちいさな簪の細工はまさにルーペで見なくちゃわからないくらいの世界。

てっきり業者の方かと思って「お店の方ですか?」と声をかけたところ
「いいえ~、一般のコレクターよ」とおっしゃる。
そこから話が始まって、またしても私の先生がおひとり増えました。

Aさんは丸山さんとも旧知の間柄だそうですが、しばらく会う機会もなく、久しぶりに平和島に来られたそう。
もともと西洋アンティークがお好きで、海外にもいらしたことがあるとか。
そのうち日本の国内にも素晴らしい技を凝縮させてような品々があることに気づいて
そこから、帯留などの小品を集めてたり、調べたりしているそうです。

そのAさんと、帯留おじさんこと丸山さんとお話させていただく機会が持てました。

前回見せていただいた通り、丸山さんのコレクションは
職人さんのこだわりや、人の手による神業(あ、矛盾してる)が感じられるものばかり。

わずか1.5センチほどの円の中に集められたゴマ粒より小さい稲穂のツブツブ感。
まるで生きているかのように暖かな体温を感じさせる毛並の線。
無地場をつるんとさせておかず、陰影がつくようにもやもやと影立たせる彫り。

丸山セレクトは丸山さんの審美眼というフィルターを通りぬけたものであることがよくわかります。
まさに、粋(スイ)と粋(イキ)が同じ漢字なのが実感できるようなモノたち。

Aさんはそれらを丹念にルーペで見ながら
感嘆したり
この細工はどういう手法で行っているのでしょう?などと聞かれたり。

Aさんの言葉を借りれば

帯留めにしても、簪にしても

  自分は身につけないけれど持っていたいコレクター
  自分が身につけるものとして購入するユーザー

がいる。

そしてご自身はこの小さな世界に込められた「謎を解き明かしたい人」なのだと。

この小さなツブツブはどういう風に掘ったのだろう?
この接着面はどういう技法でくっついているのだろう?

Aさんもその日いくつかのコレクションをお持ちになっていたのですが
その中のひとつ、
くるりとクレープのように巻かれた金属の鈴蘭の簪。
それも、そうやってその造形を作ったかという疑問を持って調べたそうです。

3人で帯留の本を見ていたときも「これはミキモトのものでしょうね。」と断定されるほど。
とくにジュエリー系の帯留にはお詳しい。
丸山さんにも色々な質問されていました。

最近アンキモ友の間では彩色象牙の帯留が憧れの的なのですが

「あの象牙の彩色は横浜でされていたらしい」というのは丸山さん談
どういう風に彩色していたのかは、実はよくわかっていないらしいのですが
水彩であるらしいので、濡れると色が落ちるのだそう。
これは丸山さんもAさんもおっしゃっていました。
その落ち加減がアンティークらしさと思うのですが、
当時はコテコテした色だったのかもしれないですね。

その話の中で、Aさんが、
池田重子さんのコレクションの彩色象牙帯留の作者のお孫さんの存在を教えてくださいました。

コメントを通してご本人にもお話を伺ったことがあるそうで、後日URLをメールで教えてくだいました。

こちらは、コレクションがおじい様の作品だと知った時のブログ

http://blog.livedoor.jp/tsukishiro2005/archives/cat_22294.html

こちらは、日本のおしゃれ展を見に行った時のブログ

http://blog.livedoor.jp/tsukishiro2005/archives/cat_22301.html?p=3

です。


こういう作家さんがきちんと仕事ができて、技術が後世に残っていってほしい。
ごめんなさい。えらそうで。
でも、私(多分アンキモの友も)は、ただ、古いからアンティーク着物が好きなのではなくて
当時の職人の技とか心意気とか時代を感じて投影させるセンスとかに
最大限の尊敬をこめて、敬愛の心を持ってアンティーク着物を着ています。



今回私が帯留に加工しようか相談した、叔母からもらったオパールのペンダントヘッド。
Aさんに見ていただいたところ
サイドの彫りの細工が丁寧で、今ではなかなかないわよ、とおっしゃってくださり
昭和30年ころまでは、そういう職人さんがきちっと仕事をしていたんだなあと思いました。

DSC_0144.JPG


バチカンが前後するのも最近はないそうで、

そうやって、日本の技術が消えていくのかもしれない…なんて思ったのでした。

でも、今回の出会いを通してまた新たな世界が広がりました。

ご自分の調べたこと、知っていることを惜しみなく教えてくださる方々との出会い
大切にしていきたいです。









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