橘のブンガク [和歌]

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  五月待つ花橘の香をかげば 昔の人の袖の香ぞする
                    
                    古今和歌集 詠み人知らず
      
              五月を待って咲く花橘の香をかぐと昔親しかったあの人の袖の香がふとよみがえる

 私の最も好きな和歌の一つです。この和歌を紹介したくてブログをブンガクがらみにしようと思ったほど。
 人間の五感のうち、最も記憶に残るのは嗅覚なのだそうです。ヨーロッパの人や、平安時代の人々はお風呂に入らなかったから香でごまかしていたなんて、よく言われることですがそれは違うと思います。香りは人間にとって、いえ、動物にとってもっとも感情を揺さぶられるものだからこそ、このように追求されたのだと思います。 
 先週見たカルティエ展でも、最後のフロアーに降りてきたとたんふわあーっとほのかな香が漂ってきました。いつか、どこかでこの香に遭遇したとき、つるさんと至福の時を過ごした記憶が蘇ってくるのでしょう。
 街中を歩いていて、ふっと懐かしい香りを感じて切なくなったことあります。柑橘系とタバコのまざったような…。清潔好きと禁煙が当たり前になった現代の若者にはこんな思い出なくなっているのでしょうか。
 ヨーロッパ人は麝香などセクシーな動物性の香りを好む人が多いのに対し、日本人は柑橘系などさわやかなものを好む人が多いといわれています。ラベンダーなどハーブの人気も高いですね。
 平安時代の人にとってこの和歌は誰もが口ずさめるものだったようです。紫式部もこの和歌を源氏物語の中で本歌取りとして何度か和歌を詠ませています。
 
  橘の香をなつかしみほととぎす 花散る里を訪ねてぞとふ
    昔を思い出させる橘の花の香が懐かしいので、ほととぎすがこの花散る里を訪れています。私が訪れた    ように

 亡き父桐壺を偲ぶ光源氏と麗景殿の女御とのやりとりです。


 
タグ:和歌 香り
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